USB-DACの重要性

現在の音楽データはデジタルデータで記録され、そしてデジタル機器で再生される。

そこで重要となってくるのはUSB-DACである。

アナログ音源であればレコードが主流だ。ただ、レコードは管理も扱いも難しく、音楽CD「以下、CD」のように簡単に音楽を聴くことはできない。そのためにカセットテープにダビングして扱いやすくしていた。

カセットテープはもとのレコードの音源に比べればやはり劣ってしまうが、それでもCDよりは音は良い(扱える周波数が22,000~30,000Hz程度、CDは20,000Hzまで)。ただ、条件があり、高性能なカセットデッキとメタルテープが必要で、さすがにラジカセではCDに太刀打ちできない。

学生時代に愛用していたAKAIのカセットデッキ

それにしても”アナログおそるべし”だ。その代わり相当お金もかかる。このAKAIのカセットデッキにしても当時(1980年代前半)で10万円超えだったと思う。さらにアナログレコードプレーヤーもやはり10万円ほどしたと記憶している。

さて、CDが現れたのはこのあと、1980年代で当時はCDプレーヤーも高価で30万円ぐらいしていた。私が手に入れたのはもう少し後で、それでも10万円ぐらいした。

その後、CDプレーヤーが普及し、あっという間にレコードはCDに置き換わった。
しかし、そのCDも現在は出荷量が最盛期にくらべれば激減しており、あるデータによるとアメリカでは、ついにアナログレコードがCDの出荷量を抜き返したとニュースになっていた。驚きである。

当時のCDプレーヤー(でかい!!)

CDの次に来たのがapple社のiPod。これは衝撃的だった。
あの小さな本体の中に1000曲以上の音楽データが格納できたからだ。

iPodシリーズ

このiPodの音源はCDだったが、CDの音源をそのまま入れてもiPodの小さなストレージには入りきれない。

iPodに音楽データを入れる場合はiTunesというソフトウェアでMacから(後ほどWindowsPCからもできるようになった)iPodをつないでCD音源を圧縮して転送していた。代表的な圧縮方式はMP3とAAC(Advanced Audio Coding)で、特にAACは優秀で現在のデジタルテレビの音声やSpotifyのストリーミングにも使われている技術である。

この技術により、CD音源を高圧縮してiPodに送り込んでいた。MP3も当時はだいぶ使われていた。特にiPod以外の比較的安い製品で使われていたと思う。
ただ、もとの音源を圧縮しているので、当然ながらもとのCD音源に比べると音質は劣化することになる。圧縮することによりもともと持っている音楽情報が失われることになるからだ。CD音源とYouTube MusicやSpotifyなどの代表的なサブスクリプションで比べると情報量は1/5に減っている。

CDにはデジタルデータで音楽が収められているのだが、人の耳ではそのまま音として聞くことができない。
そのためCDプレーヤーにはDAC(Digital Analog Converter)というデジタルデータをアナログデータに変換する装置が内蔵されている。

代表的な2社のDACチップ


このDACから出力された電気信号によって、人はスピーカーやヘッドホンでやっと音楽を楽しむことができる。(現在のデジタル処理する機械には全てこのDACが内蔵されている。ここでは、音声用DACを話題の中心にしている。)

もちろん、iPodにもDACが入ってる。apple社がよくわかっていたと思われるのが、このDACが他社のものよりも高品質だったこと。
Macも他のPCより高品質のDACが積まれていることはわりと知られている。
この割高になる高品質のDACをあえて採用したこと、そして優れたデザインと卓越したUIによりiPodは爆発的にヒットした。
そして、その後に世界を席巻するiPhoneの成功へとつながっていくことになる。

現代の必須ツールであるスマートフォンにも当然DACが内蔵されている。PCもMacもiPadも音がでるもの全てのデジタルツールにはDACが内蔵されているので、ヘッドフォンなりイヤフォンを挿せばすぐにでも音楽を楽しむことができる。

ところで、CDに入っている音楽データはどのぐらいの音質なのだろうか?
そのためにはDACとは反対のAD変換のことを少し説明する。
AD変換とはまさしく、アナログデータをデジタルデータに変換することで、変換する方法はいくつかあるが、CDにおいてはPCM(pulse code modulation)方式で記録されている。


オーディオCDの規格はサンプリング周波数44.1kHzを16ビットで符号化し、ステレオなのでこれが2ch分となる。
これで周波数が20Hz~20kHzの音を記録、再生できる。
どうしてこうなるかを理解するのはちょっと難しいので、以下のイヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」のブログがわかりやすいと思う。

【サンプリング周波数】CDは規格上「44.1kHz」あるのに実際には20kHzぐらいまでしか再生されない理由 – イヤホン・ヘッドホン専門店eイヤホンのブログ

  どうも、みなさんこんにちは!イヤホン・ヘッドホン専門店「e☆イヤホン」の、ののです!   先週までの記事では音楽プレイヤー(DAP)に搭載されている心臓部…

ここで注目なのが、「サンプリング周波数44.1kHzを16ビットで符号化」のところ。現在はこの規格が音楽データの事実上の標準となっている。
この規格は音質的なことと情報量のバランスという観点からみるとかなり優秀でとても理にかなっている。


このCD音源を正確に余すことなく性能を引き出すためには、現在でもかなりの技術が必要とされている。
例えば、CDプレーヤーひとつ見てもいろいろな技術が投入されているが、その中でも肝となるのはDACの性能と、その変換後のアナログ回路の性能である。


結局、人は耳で音として聴くのであるから、いくらデジタル処理が優秀でも、音となるアナログ処理が優秀でないとCD音源といえども100%の性能は引き出せない。ただ、闇雲に性能にこだわっていると、とんでもない値段になってしまうのでここでもバランス感覚は必要だろう。

CDプレーヤーの価格を見てみよう。
価格ドットコムを見てみると一番安いもので3000円台のものから売られている。ポータブルCDと言われるものだ。

CDウォークマンと聞けば思い出す人もいるでしょう。

今度は一番高いモデルを同じく価格ドットコムでみてみよう。

一番高かったのは、このCDプレーヤーでESOTERIC社のGrandioso K1XというCD/SACDプレーヤーで価格は3,190,000円(税込)。
これは極端な例だが、この価格の違いがどこにあるのかというと、DACの性能とアナログ部品の性能の違いが価格の違いということになる(CDを回すモータ駆動も突き詰めればアナログの制御)。同じ規格のデジタル処理をするのであれば部品の値段に大きな差はでない。

ここまで、価格の高いCDプレーヤーは町の電気屋さんでは取り扱っていないので試聴もむずかしいが、機会があれば高級CDプレーヤーの音を聞いてみて欲しい。
ヨドバシカメラや秋葉原のオーディオショップなどで視聴できる。

価格ドットコムをみると、CDプレーヤーの売れ筋は5万円から10万円台で、価格としては昔からこの価格帯だ。ただ、性能はあがっている。

売れ筋のDENON(デノン) DCD-1700NE-SP

CDプレーヤーはあくまでもCDを聴くための専用の装置であり、位置づけ的にはレコードのアナログレコードプレーヤーと同じである。
音楽を聴くためには、CDをCDプレーヤーに載せて再生ボタンを押すという手順だ。聴ける音楽はCDに入っている数曲のみである。
CDの数が数枚ならよいが、これが、数百枚ともなると聞きたい曲を探し出すのも、またCDを管理するのも大変になる。

それを解決するためにCDをリッピングして、PCのHDDまたはNASで管理するという方法が生まれた。
ただ、この場合は必ずPC(Macでも)が必要となる。

先述したように、PCにもDACが搭載されているが、これが最低限の性能しかなく、音楽を楽しむということには適していない。
さらに、近頃はCD音源以上の音源(俗にハイレゾ音源と言われる)が登場し、専用のハードウェアやソフトウェアが必要となってきた。
これらを一挙に解決したのがUSB-DACである。

Luxman DA-250

USB-DACは文字通り、PCからUSB経由で音源のデジタルデータを引き取り、専用DACでアナログ変換しアンプやヘッドフォンに渡す装置だ。

このUSB-DACも性能により価格帯がものすごく広い。
先ほどのCDプレーヤーと同様に価格ドットコムでみてみると、安くは9000円台から一番高いのは300万円以上(やはり、CDプレーヤーと同じくESOTERIC社のDAC!!)
売れ筋は用途にもよるが2万円台から10万円台というところか。ただ、高機能化し価格が上昇している製品群ではある。

USB-DACの特徴としては、CD音源からハイレゾ音源、DACによってはそれ以上のDSD音源に対応しているとこだ。もちろん、すべてのUSB-DACが対応しているわけではなく、使っているDACなどによりまちまちだ。それでも最低限はCDの規格には対応している。

CD音源のデータは先述した通り「サンプリング周波数44.1kHzを16ビットで符号化」だった。これが、ハイレゾ音源になると、サンプリング周波数192kHz/32bitになり、DSDに至っては2.8MHzという高サンプリングになる。

当然、高サンプリング周波数を処理できる装置は高価になる。デジタル処理だけではなく、音声の周波数特性(ダイナミックレンジという)も大きくなりアナログ処理もシビアになってくることは理解できるが、それでもDACが安定供給されてきていることにより、PCMで192kHz/24bit出力以上が一つの境目になってきている。

また、音楽を再生するソフトウェアもハイレゾ音源に対応したものが必要であり、WindowsPCではUSB-DAC専用のドライバーのインストールが必要であったりする。
Macは標準でドライバーが入っており、インストールが必要なものは少ないようである。

このサイトで紹介しているroonはもちろんハイレゾ音源に対応しているので、roonを体験してもらうのもよい。

最終的に音を聴くためにはアンプとスピーカまたはヘッドフォンが必要になるが、これだけの投資をおこなっても有り余る感動を得ることができるので、まだ聞いたことがない方はぜひ体験していただきたい。

あと、最近はスマートフォンに接続して高音質をたのしめるUSB-DACも充実してきているのも目が離せない。スマートフォンの場合はヘッドフォンやイヤフォンで楽しむことが前提なのでUSB-DACのアナログ回路を少なくできるので、かなりコンパクトになってきている。価格も2万円~5万円台とリーズナブルである。

愛用のAstell&KernAK HC2

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